Japanische Klassiker mit Furigana
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マダムさだやっこ
マダム貞奴
長谷川 時雨
Lesen Sie マダム貞奴 (マダムさだやっこ) von 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.999 Zeichen · 53 Bildschirme
ことに気は剛でも身体は繊弱い。心の労れに撓むこともあったであろう。そういうおり夫の果しもない事業慾に――それもありふれた事をきらう大懸りの仕事に、何もかも投じてしまう癖のあるのを知って、せめて後顧の憂いのないようにと考えたのではなかろうか。それはあの勝気な女性にも、長い間の辛労を、艱難困苦を思出すと、もう欠乏には堪えられそうもないと思うような、彼女の年が用意をさせたのでもあろうか――
川上が亡なるすこし前の事であった。貞奴夫婦を箱根で見かけた時は、貞奴は浴衣がけで宮の下から塔の沢まで来た。その折など決して彼女が、自分の財袋だけ重くしている人とは見られなかった。彼女は夫のためにはいかにも真率で、赤裸々でつくしていたと、わたしは思っている。我儘で自我のつよい芸術家同士は、ときに反感の眼をむいて睨みあったことがあったかも知れない、あるいは川上の晩年には互いの心に反りが出て、そういう日が多かったかも知れない。けれどもわたしは貞奴を貞婦だと思う。
気性もの、意地で突っ張ってゆく、何処までも弱い涙を見せまいとする女――そういう人に貞奴も生れついているようだ。