Japanische Klassiker mit Furigana
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ラしのふえ
ラ氏の笛
松永 延造
Lesen Sie ラ氏の笛 (ラしのふえ) von 松永 延造 (まつながえんぞう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.706 Zeichen · 18 Bildschirme
その事は彼れの病気に大きい支障を来すおそれがあるので、私は慌てて口をつぐみ、あまり斟酌なく話し込んだ事を此の上もなく後悔した。私は何うかして彼れの愁傷を取り消したいと願いながら、当惑した眼を彼れの枕元へと落した時、半ば広げられた鼡色の風呂敷の中に、不図一枚の絵画と一本の日本風な横笛とを発見した。絵画は稍々原始的な石版刷りで、恐らくインドラという神の図であった。笛は幾らか寸の足りぬ安価相な出来で、その末端に、素人細工らしい赤銅の鎖が付けてあった。
所在なさに、私はその笛を取り上げ、そして、言う事がない為めに、却って態と何かしらを口走った――
「早くお治りなさい、この笛を吹いて、楽しめるように……」
言い遅れたが、彼れは誠に巧みな笛吹きで、主に印度の古調を、日本の竹から響き出させる事が出来た。
四
その後、ラ氏の感情は好い諦めのために鎮められて、最早、人の前で、涙を見せるような事もなくなった。その替り、何かしら何時も人を冷いものに見ようとする傾向が、彼れの心の底で育ちかけているのも看過しがたかった。
悲しい事に、人は多くの場合、二つの極端の間を行き迷うものである。