Japanische Klassiker mit Furigana
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ヴィヨンのつま
ヴィヨンの妻
Lesen Sie ヴィヨンの妻 (ヴィヨンのつま) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.363 Zeichen · 112 Bildschirme
まさか、いい旦那がついたから、とも思いませんが、私は花江さんの通帳に弐百円とか参百円とかのハンコを押すたんびに、なんだか胸がどきどきして顔があからむのです。
そうして次第に私は苦しくなりました。花江さんは決して凄腕なんかじゃないんだけれども、しかし、この部落の人たちはみんな花江さんをねらって、お金なんかをやって、そうして、花江さんをダメにしてしまうのではなかろうか。きっとそうだ、と思うと、ぎょっとして夜中に床からむっくり起き上った事さえありました。
けれども花江さんは、やっぱり一週間にいちどくらいの割で、平気でお金を持って来ます。いまはもう、胸がどきどきして顔が赤らむどころか、あんまり苦しくて顔が蒼くなり額に油汗のにじみ出るような気持で、花江さんの取り澄まして差出す証紙を貼った汚い十円紙幣を一枚二枚と数えながら、矢庭に全部ひき裂いてしまいたい発作に襲われた事が何度あったか知れません。そうして私は、花江さんに一こと言ってやりたかった。あの、れいの鏡花の小説に出て来る有名な、せりふ、「死んでも、ひとのおもちゃになるな!」と、キザもキザ、それに私のような野暮な田舎者には、とても言い出し得ない台詞ですが、でも私は大まじめに、その一言を言ってやりたくて仕方が無かったんです。