Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ヴィヨンのつま

ヴィヨンの妻

太宰 治

Lesen Sie ヴィヨンの妻 (ヴィヨンのつま) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.363 Zeichen · 112 Bildschirme

Aozora Bunko

コップに午前の陽の光が当って、きれいだと思いました。

「誰もいないの?」

夫は、私のほうを振り向いて見て、

「うん。おやじはまだ仕入れから帰らないし、ばあさんは、ちょっといままでお勝手のほうにいたようだったけど、いませんか?」

「ゆうべは、おいでにならなかったの?」

「来ました。椿屋のさっちゃんの顔を見ないとこのごろ眠れなくなってね、十時すぎにここを覗いてみたら、いましがた帰りましたというのでね」

「それで?」

「泊っちゃいましたよ、ここへ。雨はざんざ降っているし」

「あたしも、こんどから、このお店にずっと泊めてもらう事にしようかしら」

「いいでしょう、それも」

「そうするわ。あの家をいつまでも借りてるのは、意味ないもの」

夫は、黙ってまた新聞に眼をそそぎ、

「やあ、また僕の悪口を書いている。エピキュリアンのにせ貴族だってさ。こいつは、当っていない。神におびえるエピキュリアン、とでも言ったらよいのに。さっちゃん、ごらん、ここに僕のことを、人非人なんて書いていますよ。違うよねえ。僕は今だから言うけれども、去年の暮にね、ここから五千円持って出たのは、さっちゃんと坊やに、あのお金で久し振りのいいお正月をさせたかったからです。