Japanische Klassiker mit Furigana
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ヴィヨンのつま
ヴィヨンの妻
Lesen Sie ヴィヨンの妻 (ヴィヨンのつま) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.363 Zeichen · 112 Bildschirme
「やあ、お父さんが帰って来た」
と七歳の長女。
「まあ、お父さん、いったいどこへ行っていらしたんです」
と赤ん坊を抱いてその母も出て来る。
とっさに、うまい嘘も思い浮ばず、
「あちこち、あちこち」
と言い、
「皆、めしはすんだのか」
などと、必死のごまかしの質問を発し、二重まわしを脱いで、部屋に一歩踏み込むと、箪笥の上からラジオの声。
「買ったのかい? これを」
私には外泊の弱味がある。怒る事が出来なかった。
「これは、マサ子のよ」
と七歳の長女は得意顔で、
「お母さんと一緒に吉祥寺へ行って、買って来たのよ」
「それは、よかったねえ」
と父は子供には、あいそを言い、それから母に向って小声で、
「高かったろう。いくらだった?」
千いくらだったと母は答える。
「高い。いったいお前は、どこから、そんな大金を算段出来たの?」
父は酒と煙草とおいしい副食物のために、いつもお金に窮して、それこそ、あちこち、あちこちの出版社から、ひどい借金をしてしまって、いきおい家庭は貧寒、母の財布には、せいぜい百円紙幣三、四枚、というのが、全くいつわりの無い実状なのである。
「お父さんの一晩のお酒代にも足りないのに、大金だなんて、……」