Japanische Klassiker mit Furigana
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ヴィヨンのつま
ヴィヨンの妻
Lesen Sie ヴィヨンの妻 (ヴィヨンのつま) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.363 Zeichen · 112 Bildschirme
しかし、これまでの経緯は一応、奥さんに申し上げて置きます」
「はあ、どうぞ。おあがりになって。そうして、ゆっくり」
「いや、そんな、ゆっくりもしておられませんが」
と言い、男のひとは外套を脱ぎかけました。
「そのままで、どうぞ。お寒いんですから、本当に、そのままで、お願いします。家の中には火の気が一つも無いのでございますから」
「では、このままで失礼します」
「どうぞ。そちらのお方も、どうぞ、そのままで」
男のひとがさきに、それから女のひとが、夫の部屋の六畳間にはいり、腐りかけているような畳、破れほうだいの障子、落ちかけている壁、紙がはがれて中の骨が露出している襖、片隅に机と本箱、それもからっぽの本箱、そのような荒涼たる部屋の風景に接して、お二人とも息を呑んだような様子でした。
破れて綿のはみ出ている座蒲団を私はお二人にすすめて、
「畳が汚うございますから、どうぞ、こんなものでも、おあてになって」
と言い、それから改めてお二人に御挨拶を申しました。
「はじめてお目にかかります。主人がこれまで、たいへんなご迷惑ばかりおかけしてまいりましたようで、また、今夜は何をどう致しました事やら、あのようなおそろしい真似などして、おわびの申し上げ様もございませぬ。