Japanische Klassiker mit Furigana
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ヴィヨンのつま
ヴィヨンの妻
Lesen Sie ヴィヨンの妻 (ヴィヨンのつま) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 56.363 Zeichen · 112 Bildschirme
光琳の躑躅などは、セザンヌ、モネー、ゴーギャン、誰の画よりも、すぐれていると思われました。こうしてまた、だんだん私の所謂精神生活が、息を吹きかえして来たようで、けれどもさすがに自分が光琳、乾山のような名家になろうなどという大それた野心を起す事はなく、まあ片田舎のディレッタント、そうして自分に出来る精一ぱいの仕事は、朝から晩まで郵便局の窓口に坐って、他人の紙幣をかぞえている事、せいぜいそれくらいのところだが、私のような無能無学の人間には、そんな生活だって、あながち堕落の生活ではあるまい。謙譲の王冠というものも、有るかも知れぬ。平凡な日々の業務に精励するという事こそ最も高尚な精神生活かも知れない。などと少しずつ自分の日々の暮しにプライドを持ちはじめて、その頃ちょうど円貨の切り換えがあり、こんな片田舎の三等郵便局でも、いやいや、小さい郵便局ほど人手不足でかえって、てんてこ舞いのいそがしさだったようで、あの頃は私たちは毎日早朝から預金の申告受附けだの、旧円の証紙張りだの、へとへとになっても休む事が出来ず、殊にも私は、伯父の居候の身分ですから御恩返しはこの時とばかりに、両手がまるで鉄の手袋でもはめているように重くて、少しも自分の手の感じがしなくなったほどに働きました。