Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとつのあいじょう
一つの愛情
豊島 与志雄
Lesen Sie 一つの愛情 (ひとつのあいじょう) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.635 Zeichen · 22 Bildschirme
心はもうめちゃめちゃでございました。体ももうめちゃめちゃでございました。自分の人生はもうすっかり終ったのだと思いました。
ひとりになって死んでしまおう、下らぬものに犯されることのないひとりになって。私は堪え難い生の苦痛をにない、夢中でこの家にのがれてまいりました。
もうどんなことがあっても、ここから一歩も外へは出ないし、もうどうなってもよい。――それから、無茶苦茶に悲惨な心すさまじい日々が過ぎて行きました。
私には兄が一人ございます。今は遠方に住んでおりますけれど、その兄が、こういう私に、家と、少し離れてるところにある田を八段ばかりと、山を五段ばかり、私の名儀にして、お金を少々与えてくれました。けれど、小作料ぐらいの収入で、どうして生活してゆけましょう。私はそれからも兄に生活の僅かな補助を受けました。私のみすぼらしい虫のように哀れな貧しい生活は、ずっと続きました。
その間に、私の心も、自分以外の世間の空気に少しずつ触れる機会のある度に、次第にいろいろ移り変ってまいりました。けれど、私にはどうしても、この世に生きている人の心がわかりませぬ、わかりませぬ。