Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとつのめばえ
一つの芽生
宮本 百合子
Lesen Sie 一つの芽生 (ひとつのめばえ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 14.627 Zeichen · 29 Bildschirme
最初にあの感じが起ったときから、ここまで動いて来る心の後を附けていた、もう一つの自分の心が非常にあわてたのを感じた。
けれども、なぜ彼は死ぬということが、今頃から分るのだ。妙に反抗的な心持になって自分は考えた。
彼が死ななければならないほど、苦しがっていもしないのに。第一まだ医者さえ来ないでどうしてそんなことが解るのだ。あまり嵐が怖いので、お前はどうかしたな。
私はそのまま笑ってしまうか、さもなければ確かにあまりこわいので調子の狂っているどの点かを見出したかった。
けれども、不思議なことには、そんなにも否定し紛らそうと努力する意志が強いにも拘らず、心のかなり大部分は、それを肯定するような傾向にあるのを知ると、なおさら恐ろしいような妙な心持になってしまった。
そこでは、否定する意志と、肯定したより広い何物かは、もう対立という関係を破っている。
静かに落着いた、そしてかなりまで澄んだ何物かが、動かすべからざることとしてそのことを肯定している前で、まるで脳味噌のない侏儒(しゅじゅ)のような否定が、哀れな、けれども彼自身としては死物狂いの大騒動をしているようにさえ感じたのである。