Japanische Klassiker mit Furigana
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いっこく
一刻
宮本 百合子
Lesen Sie 一刻 (いっこく) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 1.103 Zeichen · 3 Bildschirme
少し奥には、「ねんねこ」おんぶをした女の横姿も見えた。
「みんなやせてるね」
「蒼いや。な」
日頃あれほど粗暴な群集も、その場からちっとも動かず、カラリと開いているドアの方に注意をこらした。
「ぼーっとしているねえ、みんな」
そのうち、その電車は駛り去った。次に、又京浜が来て、私どもは、揉み込まれた。
上野へ来た。「降りますよウ」
「降せ! 降せったら……」
大騒動になった。しかし、エンジンの工合が損じ、ドアは開かないまま、上野を出てしまった。
鶯谷へついたとき、人々はせき立って、窓から降りはじめた。男たちばかりが降りている。そのうちやっと、ドアが開いた。
出口に近づいて行ったら、反対の坐席の横の方から、若い女が、おろおろになって
「あの、この辺にショール落ちていないでしょうか」
「こんなこみかたじゃ、落ちるせきがないですよ」
「どうしましょう! 舶来のショールで母さんの大事にしているのを、さむいからってかりて来たのに」
「降りるさわぎのとき、とられたのかもしれない。すっと引っぱって、とるんですて」
「まア! わたし帰れないわ、どうしましょう。届けたって、出ないでしょうね!」