Japanische Klassiker mit Furigana
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ひとつぼかん
一坪館
海野 十三
Lesen Sie 一坪館 (ひとつぼかん) von 海野 十三 (うんのじゅうざ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 27.902 Zeichen · 56 Bildschirme
「死んでしまおうか……」
源一は、唇をかみしめた。自分もなさけない。東京もなさけない。日本もなさけない。未来にたのしみも希望もみつからない。
そのときだった。源一の前にゲートルをまいた二本の足が停った。誰だろう。
「ほほう、これはおそれいった。れんげに、たんぽぽか」
がらがらとした大きな声が、源一の頭の上にひびいた。源一は、下を向いて泣いていたので、顔は涙によごれていた。その涙を、ひざの上に組んだ服の袖で、ごしごしとこすってから顔をあげた。
源一の前には、見るからに人のよさそうな男がつったっていた。その男は、年が若いのか、そうでないのか、よく分らなかったが、後で分ったところによると、まだ二十歳の青年だった。年がよく分らないのは、その男の顔が、南瓜に似ていて、そのうえに雀の巣をひっかきまわしたようなもじゃもじゃの髪の毛を夕風にふかせ、まるで畑から案山子がとびだしてきたような滑稽な顔かたちをしていたせいであろう。彼は、肩から画板と絵具箱とをつりさげ、そして右手には画架をたたんだものをひっさげていた。それを見れば、この男が画家であることが一目で分るはずであるが、源一はすぐにはそれに気がつかなかった。