Japanische Klassiker mit Furigana
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いっぽんのはな
一本の花
宮本 百合子
Lesen Sie 一本の花 (いっぽんのはな) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 26.709 Zeichen · 55 Bildschirme
話が途切れ、磯田は暫く朝子の手許を見下していたが、
「どれ、じゃあ、どうも失礼致しました」
と立ちなおした。
「そう?……どうも失礼」
歩きかけた磯田は、
「偉く日がさすね」
一二歩小戻りして、丁度朝子の髪に照りつけた西日の当る窓のカアテンを下した。
工場で刷り上げる間、三四十分ずつ手が空く。朝子は、その間に、自分一人いるきりの二階の窓々をあちらこちらへぶらぶらと歩いた。
一つの窓と遠く向い合う位置に、工場の小窓が開いていた。普通の場末の二階家をそのまま工場に使っていた。穢い羽目の高いところに、三尺に一間の窓、そこには格子も硝子もなくていきなり内部が見えた。窓と云うより、陰気な創口のようであった。両側からもたせあった長い活字棚、その中へ、活字を戻している小僧や若い女工の姿も見えた。
外見既にがたがたで、活字の重さや、人間の労働のために歪み膨らんだ建物の裡は、暗そうであった。女工が、その、こちらに向いて開いた狭い窓際を何かの用で通り過るときだけ、水浅黄の襦袢の衿など朝子の目に入った。朝子はもう余程前、
「いつか工場見せて下さいな」
と嘉造に云った。
「どなたにもお断りしておりますんで――どうも……穢くて仕方ありませんですよ御覧になったって」