Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

ja-reading.com

Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.

さんじゅうにこく

三十二刻

山本 周五郎

Lesen Sie 三十二刻 (さんじゅうにこく) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.273 Zeichen · 31 Bildschirme

Aozora Bunko

図書の巨きな眼は驚きのために瞬きを忘れたようになった。

宇女であった……彼女は黒髪を束ねて背に垂れ、白装束の腰紐をかたく締上げた凛々しい姿で、薙刀を右手に抱込み、敷居際まで進んで膝をついた。

「宇女ではないか」

図書は噛付くように叫んだ。

「誰の許しを得てこれへまいったぞ」

「はい思召に反くとは承知仕りました。けれど家の大事と承わり」

「ならん!」

図書は片足で床板をはたと踏んだ、

「そちはもはやこの家の者ではない。よしこの家の者たりとも、今は女童の出る場合ではないのだ。出て行け」

「わたくしは疋田の嫁でござります」

宇女は少しも怯まぬ眼で、舅の顔をじっと見上げながら云った。

「疋田の家の大事ゆえ、こなたさまの思召に反くのを知りつつまいったのでござります。良人主馬から去ったと申されぬ限り、わたくしここを一歩も動きはいたしませぬ」

「馬鹿が。この家に居る七十余人、今宵を限りに死ぬるのだぞ」

「承知のうえでございます」

静かに、微笑さえうかべている宇女の面を、図書は烈火のように睨んでいたが……ふと、稲妻のように頭へ閃めいたものがある。

「宇女、しかと返辞をせい、火薬を水浸しにしたのはそちであろう」