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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんじゅうにこく

三十二刻

山本 周五郎

Lesen Sie 三十二刻 (さんじゅうにこく) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.273 Zeichen · 31 Bildschirme

Aozora Bunko

もしそれが二倍の広さであったら、恐らく防戦は困難なものになったであろう。

母屋の裏手へ廻ると、宇女が小者たちを指図しながら何事かしていた……図書が食事にかかると共に、彼女はどこかへ去っていたのである。そっと近寄ってみると、そこには夥しい蓆が積んであり、それを水に浸している様子であった。……図書はしばらく見守っていたが、なんのためにそのような事をするのか見当がつかず、そのまま書院へと戻った。

その夜はついに敵の攻撃はなかった。

図書は家士たちを交代で眠らせ、自分も居間へ入って横になった。勝つべき戦ではない。例えば勝ったとしても命はないものと定っている。見苦しい死にざまさえしなければよいという考えが、横になるとすぐ体も心も伸び伸びとさせた。

宇女はそれから更に半刻ほども姿を見せなかった。屋根の上へ誰か登った様子と、それを指揮する彼女の声が二三度聞えた。

――なにをしているのだ。

そう思う気持が、図書の考えを再び宇女の方へ呼戻した。そして主馬が初めて彼女の話を持出した時の、大きな失望と怒りとが胸へ甦えってきた。

図書にとって、主馬は大事な一粒種というだけでなく、自分のすべての希望を賭けた自慢の息子であった。