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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんじゅうにこく

三十二刻

山本 周五郎

Lesen Sie 三十二刻 (さんじゅうにこく) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 15.273 Zeichen · 31 Bildschirme

Aozora Bunko

疋田図書が出てきた。

彼は五十九歳で、一寸も厚みのある白髪まじりの濃い眉と、並外れて巨きな眼とが、色の黒い骨張った顔をひどく圧倒的なものにしている。背丈は六尺一寸。「図書どのが高下駄を穿いて傘を差すとお城の門につかえる」と云われたくらいであった。

「いずれも、早々に御苦労なことじゃ」

座につくとすぐ、彼はよく徹る力の籠った声で云った。

「かねて承知の通り、山脇長門と悶着の間柄であったが、このたびついにかような事に相成ってしまった。お上のお留守中ではあり、堪忍のなる限りはしてきたのだが、これ以上の忍耐は卑怯の貶をまぬかれない。この白髪首を賭けて武道の面目を立てるつもりじゃ」

「だが、よく聞いてもらおう」

図書は一座を見廻して続けた。

「……このたびの事は長門とわしの喧嘩じゃ、一族おのおのにはなんの関り合いもない。こうして駈込んでくれたのは過分に思うが、どうかおのおのにはこのまま立退いてもらいたい」

「なにこのまま帰れと仰有るか」

「成り申さぬ、さようなこと不承知じゃ」

「我等は妻子と水盃をしてきたのじゃ」

「不承知でござるぞ」

「我等は一歩も動きませんぞ」

一時に皆が騒ぎだした。