Japanische Klassiker mit Furigana
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さんがつのだいよんにちよう
三月の第四日曜
宮本 百合子
Lesen Sie 三月の第四日曜 (さんがつのだいよんにちよう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.826 Zeichen · 42 Bildschirme
どんなわかり難いところかと思ったが、段々をあがったらもうそこが常磐線の天井の低い待合室で、奥のベンチには将校マントの軍人だの、黒レースのショールをした女だのかなりの人が溜っている。同じホームの片側から千葉の方へゆく電車が出るので混雑がひどい。
こっちのホームは高みで一層吹きっさらしだが、いつの間にか大分白んで来て、いかにも風のある朝らしい橙色の東空に鼠色雲が叢だっている空の見晴しや、山の手電車がしっきりなく来てそこから呑吐される無数の男女が、まだ光りの足りない払暁の空気のなかで艶のない顔色を忙しそうに靴や下駄で歩いている姿をこっちで見ているのも珍しかった。ふだんなら自分も今あっちのホームをゆく娘のように小さい風呂敷包みを胸の前にかかえて王子の通りを歩いている時刻なのである。今朝の特別さがまざまざとしてサイが思わずショールをひろげ直したとき、頭の上でラウド・スピイカアが急に鳴り出した。
「三等車はホーム中央事務室より後の方でございます」
サイばかりではなく、黒いレース・ショールの女も大きい折鞄を下げた国防色の服の男、巻ゲートルの男、一団が前後してラウド・スピイカアが同じ文句をくりかえしている下をぞろぞろとそっちへ行った。