Japanische Klassiker mit Furigana
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みうらろうじんむかしばなし
三浦老人昔話
岡本 綺堂
Lesen Sie 三浦老人昔話 (みうらろうじんむかしばなし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 113.637 Zeichen · 224 Bildschirme
医者が来て診察して、やはり蝮の毒とわかったので、小指を半分ほど切りました。その当時でも、医者はそのくらいの療治を心得ていたのです。
大難が小難、小指の先ぐらいは吉原の花魁でも切ります。それで命が助かれば実に仕合せと云わなければなりません。医者もこれで大丈夫だと受合って帰り、阿部さんもお幾も先ずほっとしましたが、なるべく静かに寝ていろと医者からも注意されたので、阿部さんはすぐに床を敷かせて横になりました。本所は蚊の早いところですから、四月の末から蚊帳を吊っています。阿部さんは蚊帳のなかでうと/\していると、気のせいか、すこしは熱も出たようです。宵から雨が強くなったとみえて、庭のわか葉をうつ音がぴしゃ/\ときこえます。すると、どことも無しに、こんな声が阿部さんの耳にきこえました。
「置いてけえ。」
かすかに眼をあいて見まわしたが、蚊帳の外には誰もいないらしい。やはり空耳だと思っていると、又しばらくして同じような声がきこえました。
「置いてけえ。」
阿部さんも堪らなくなって飛び起きました。そうして、あわたゞしくお幾をよびました。
「おい、おい。早く来てくれ」