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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんりょうきょう

三稜鏡

佐左木 俊郎

Lesen Sie 三稜鏡 (さんりょうきょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.347 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

兎に角、首だけが、死体の横ににょっきりと立っていた。

(――よし! あの首を持って逃げてやろう)

私はその瞬間に、と、まあ、考えた。

(そして、俺も、あの首を抱いて、彼女と一緒に死んでやろう)

私は、彼女だけを死なして置くのは可哀想な気がして、急にそう、彼女の首との心中を企てたのであった。そして、その考えが閃めくと、私は次の瞬間には、もう彼女の首を抱いて、その研究室を飛出したのであった。

「こらっ! おい!」

「待て待て!」

嵐のような喚き声が起って、若い医者達は、懸命に私を追いかけて来た。併し、私は、研究室を出ると、直ぐ庭へ飛下りて、高い煉瓦塀を乗越えて了った。そして私は、笠松外科病院から、一里とは離れていないあの海岸の、あの絶壁の上まで、駈続けに駈けたのであった。

私はそして、あの絶壁の上から、彼女の首を抱いて海の中に飛込んだのであるが、幸か不幸か私は、彼女の首を海の中に失ったまま陸へ匍上ることが出来た。私は又更に、あの深い黒溝の中に飛込んで見たのだが、矢張、それでも死ぬことが出来なかった。併し、これは、私に取っては決して幸福ではない。私はそして、今でも何うかして死にたいと思っているし、それ以来ずうっと死場所を求めて歩いていたのであるが、そのうち、今度の事件をふと耳にしたのであった。