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Japanische Klassiker mit Furigana

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さんりょうきょう

三稜鏡

佐左木 俊郎

Lesen Sie 三稜鏡 (さんりょうきょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.347 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

私は常々から、患者の日常行動をそれとなく注意していて、その行動によって病状を診断鑑定し、或る一つの仮説を立て発病の原因を探り、それからその仮説に基いて療法を研究するのであるが、彼の場合は、その発病の原因徴候が極めて濃厚に露出していた。彼は、私が部屋を間違えたような風を装って這入って行ったのにもかかわらず、私の顔を見ると、驚きと欣びとの眼を瞬りながら腰を上げた。

「おっ! 笠松先生! 西谷です」

彼はそう云って丁寧にお辞儀をした。

「やあ!」

私は軽く会釈した。私は、彼が私を笠松と云う人と錯覚していることを知ったが、今の場合、彼の想像を奔放して置いて、彼の脳の中を覗いて見る必要があった。そのために、私の方からはなるべく語りかけないようにして、彼の話に対しては私は全然受身の態度に出た。

「それじゃあ、僕をここへ拉れて来さしたのは、笠松先生だったのですね?」

彼は暗い疑惑の中から、漸く安堵したようにして、微笑を含みながら云った。

「あ!」

「何か御用だったのでしょうか?」

「あ!」

私は簡単にそう云ったが、その先を、何う進めていいかわからなかった。折角そこまで押拡げて来た彼の空想を、そこで壊して了っては、全然手も足も出なくなるからである。