Japanische Klassiker mit Furigana
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さんりょうきょう
三稜鏡
佐左木 俊郎
Lesen Sie 三稜鏡 (さんりょうきょう) von 佐左木 俊郎 (ささきとしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.347 Zeichen · 42 Bildschirme
西谷はそして、机に向って本を読み続ける代りに、娘と何か話をしているようなことが多くなった。時には、私の仕事場へ来て、何時までも何時までも私の手先を視詰めているようなことがあった。
「爺さんの手は、全く、羨しいほど器用に動くね。外科医も、それだけ器用に手先が動いたら、何んなにいいかなあ。殊にも、僕なんかと来たら、手先が不器用で……」
突然そんなことを云うことがあった。
「それは、幾ら外科医術が進歩したところで、又、何んなに手先の器用な博士にしたところで、私の真似は出来ますまいって」
私はそんなことを云いながら、人形の、脚を接合せたり、首を接合せたりした。
「いや、外科医術の最大の理想と云うのは、首と胴との接合せなんだそうですがね」
「そりゃあ、勿論、そこまで行かないと、それから云うと、私など、人形の医者にしちゃあ、立派な博士だ。笠松博士と云うところかな……」
私はそんなことを云って笑った。西谷と私がそうして打解けて話していることが、娘には大変に嬉しいらしく、何時も娘は私達のところへ茶を淹れて出て来るのであった。娘がそしてどんなに西谷を愛しているか、又、西谷もどんなに娘を愛しているかは、私にはよくわかっていた。