Japanische Klassiker mit Furigana
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ふざいじぬし
不在地主
小林 多喜二
Lesen Sie 不在地主 (ふざいじぬし) von 小林 多喜二 (こばやしたきじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.990 Zeichen · 141 Bildschirme
物音で、家の中から、「健かア――?」と母親が訊いた。
「う。」――口の中で返事をしながら、裾をまくって、上り端に腰を下した。――厩の中から、ムレた敷藁の匂いがきた。
由三はランプの下に腹這いになって、両脛をバタバタ動かしながら、五、六枚しかついていないボロボロの絵本を、指を嘗め嘗め頁を繰っていた。
「姉、ここば読んでけれや。」
由三は炉辺でドザを刺していた姉の肱をひいた。
「馬鹿ッ!」
姉はギクッとして、縫物をもったまま指を口に持って行って吸った。「馬鹿ッ! 針ば手さ刺した!」
由三は首を縮めて、姉の顔を見た。――「な、姉、この犬どうなるんだ?」
「姉なんか分らない。」
「よオ――」
「うるさい!」
「よオ――たら!――んだら、悪戯するど!」
健は炉辺に大きく安坐をかいて坐った。指を熊手にして、ゴシゴシ頭をかいた。
家の中は、長い間の焚火のために、天井と云わず、羽目板と云わず、ニヤニヤと黒光りに光っていた。天井に渡してある梁や丸太からは、長い煤が幾つも下っていて、それが下からの焚火の火勢や風で揺れた。――ランプは真中に一つだけ釣ってある。ランプの丸い影が天井の裸の梁木に光の輪をうつした。