Japanische Klassiker mit Furigana
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ふしょうのあに
不肖の兄
豊島 与志雄
Lesen Sie 不肖の兄 (ふしょうのあに) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.889 Zeichen · 39 Bildschirme
お前は忠実に家庭を守るだろう。そして、同じような日々のうちから、僅かな月給の余蓄と赤ん坊……。
もう云うのを止そう。お前の心に暗い影を投げてはいけないから。
で兎に角、本当のところを云えば、浜地とお前との結婚に、僕は賛成でも不賛成でもなかったまでだ。もっとどうにかした生き方はないものかと、そうお前のために希望しながらも、また一方から云えば、浜地との結婚は最も安全な途かも知れないとも思った。
が俺は……。いいかね、また俺は……なんだ。俺はお前を自分と同じ世界のものに、いつまでもしておきたかった。せめてお前だけは、拘束のない広々とした境地に置きたかった。それなのに、なぜ浜地と愛し合うようなことをしたんだ。つまらない。結婚は一種の束縛だ。……とそんな風に僕は感じて、それでもやはり憚られて、卑怯な真似をして自らごまかしていた。
その時、ほら、裏口をことこと誰か叩くような音がしたろう。僕はなぜだかぞーっとして竦んでしまった。
「え。」
声には出さないがそういった呼気で、母は半ば耳を傾け半ば僕の顔色を窺った。
「なあに……どうしたの。」
平気な声で、お前は不思議そうに僕と母との顔を見比べている。