Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふしょうのあに

不肖の兄

豊島 与志雄

Lesen Sie 不肖の兄 (ふしょうのあに) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.889 Zeichen · 39 Bildschirme

Aozora Bunko

あの場合お前の口から、早く結婚でもせよとはっきり云わせることは、余り思いやりのない仕打なんだからね。お前と母とが、影で僕のことをどんな風に話し合ったか、それは僕の知ったことじゃない。

だが、実際、いやに寒い静かな晩だったね。僕は胸がむずむずしてくるのを、しいて蝸牛のように自分の殼の中だけに引込んでいたかった。そしてふと思いついて、炬燵を拵えようと云い出した。母とお前が取合わないのを、むりに押し切って炬燵を拵えさした。それから、果物を買って来て貰って、お初は父の仏壇へなどと云って笑われた。だが、馬鹿な、誰が仏様なんかを信ずるものか。そして炬燵の中がぽかぽかしてくると、とうとうやはり、ビールに※さ。お影でつねやが一番忙しい目をみた。

そうして、炬燵の中でビールを飲みながら、取留めもない話をしながら、僕はむりに涙を押え止めていた。何故ともなく、すぐにも泣き出しそうな気持だった。だが、心の中では、別なことを考えていたんだ。こんなちっぽけな家庭なんか吹き飛んじまえ、こんな惨めな幸福なんか、こんな古ぼけた天井なんか、みんな吹き飛んじまえ、青々とした大空が現われてこい……とね。