Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふしょうのあに

不肖の兄

豊島 与志雄

Lesen Sie 不肖の兄 (ふしょうのあに) von 豊島 与志雄 (とよしまよしお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.889 Zeichen · 39 Bildschirme

Aozora Bunko

「悪いのかい。」

「お午頃から急になんですけれど、大丈夫よ。……待ってて頂戴。今髪をあげてしまうから。」

長火鉢の前で、僕は煙草を吸い初めた。その煙草が一本終らないうちに、美代子は突然うーむと苦しみ初めた。照代は飛んでいった。

「仰向いちゃ駄目……つっ伏すのよ……そう……いいかい……。」

呻り声の間に痛い痛いと訴える美代子を、照代とばあやさんとは上からのしかかって、腰のあたりを力一杯押えつけた。

「ねえさん、注射を頼んでよ、後生だから……。おう痛い……痛いよう……。」

「我慢だよ、一寸の間なんだから……。注射はもういけないって、先生が仰言ったでしょう。」

痛みが少し鎮まると、美代子は金盥にしがみついていた。

「無理に吐こうとしちゃいけないよ。注射のせいだよ。何も出やしないんだから。」

そしてるうちに美代子は、もうぐったりして眼を閉じていた。

「蒟蒻を取り代えてみましょうか、煮立ってるから。」とばあやさんが云った。

「そう。いいでしょう、こんど起きた時で。」

そして照代はまた鏡台の前に戻ってきた。

梳手が髪を梳いてる間、お師匠さんは手焙で煙管をはたはたやっていた。