Japanische Klassiker mit Furigana
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せかいのかふ
世界の寡婦
宮本 百合子
Lesen Sie 世界の寡婦 (せかいのかふ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 8.525 Zeichen · 17 Bildschirme
それは、戦場で死んだのでもなく、爆撃で死んだのでもないが戦争の直接のおかげで殺された人々の妻たちが世界じゅうにいる、ということである。
戦争中という言葉が、今日いわれる場合、私たちは一言の説明を加えないでも、それが苦しかった時代、無茶な抑圧のあった時代、人権がふみにじられていた時期として、心が通じ合う。一冊の雑誌、一冊の本、風呂屋、理髪店での世間話さえ、それが戦争についての批評めいたものだと密告され、捕縛され、投獄された。私たちは、今もなお悪夢のような印象で一つのポスターを思い出す。省線各駅、町会の告知板に、徳川時代の、十手をもった捕りかたが手に手にふりかざした御用提燈が赤い色で描かれたポスターがはられた。赤い御用提燈に毒々しくスパイ御用心と書かれていた。当時の権力者たちは、自分らでまきおこした大惨禍を、国民が反省し、考察し、批判して是非を論じることを極端におそれた。そういうものを一括して、スパイと思わせた。道理に立つ足場が弱かったから、それだけ人間の理性の明るさを恐怖した。ある婦人雑誌などはその一頁ごとに、洋鬼を殺せ、とおそろしい文字を刷った雑誌を、おとなしい家庭的な日本の妻たちの手もとにおくったのであった。