Japanische Klassiker mit Furigana
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いきりょう
久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
久生 十蘭
Lesen Sie 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集 (いきりょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.698 Zeichen · 42 Bildschirme
「でも、年齢が」
「ちっとも構いませんのよ。……あなたが泊っていらっしゃるあの家なんかじゃ、二ツになる赤ん坊が死んだのに、六十ばかりのお爺さんになってやって来ましたわ」
「でも、どうも……僕には……」
「父も母も早く死にまして、兄とあたしと二人の孫きりになってしまったのに、その兄も死にましたでしょう。……戦死する間際まで水濠の岸の枯れた野菊を写生したりして、しっかりした死に方だったそうで、それは自慢にさえしているくらいなのですけど、どうしたのか、兄はまだいちども帰って来てはくれませんの。……お盆になりますと、今年もまた姿を見されぬと言って、老人が二人で手を取り合って泣きますの。……明日もまた、苧殻を焚いておそくまで門に立ちつくすのかと思うと、それを見るのがいまから辛くてなりませんわ」
高山の奥の、こんな月魄の光の中では、平凡なことも詩のように美しく心を搏つのかもしれない。
そんな縹眇たる話を聞いていると、自分の心が太古の巫術の世界へ引込まれていくようで、とりとめがないほどぼんやりと頭が霞んで来た。
「お老人がそんなに喜ばれるというのでしたら、ひとつ身代りを勤めて冥土の話でもしますか」