Japanische Klassiker mit Furigana
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いきりょう
久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
久生 十蘭
Lesen Sie 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集 (いきりょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.698 Zeichen · 42 Bildschirme
三十郎は、ほのかな気持になって心の底から、
「そうか、それはよくしてくれた。お前が祖父祖母の側にいてくれるなら、おれも安心して冥土へ帰ることができる」
と、礼をいうと、そのひとも襟に顎をつけて、
「どうか、心配しないでください」
と、うるんだような声でこたえた。松久はあらたまって、
「まあ、それはともかく、久々のご挨拶を申しましょう。……祖父、祖母、お久しゅうございました。お息災でなによりです。わたしももっと早く帰って来たかったのですが、冥土にもいろいろ都合があって、勝手に抜け出すというわけにもゆかず、今年は今年はと心にかけながら、こんなに遅くなってしまって、なんとも申訳がありません」
と、実誼なふうに詫をのべた。お爺さんは、枯木のような手を振って、
「なにを言うぞ。……愚痴は老人のくせじゃ、たとえ二年が三年遅れたとて、こう戻り来して、まさめに眉面つきを見たうえは、長年の思いも晴れたそうな」
お婆さんは、お爺さんの袖を引いて、
「お爺よ、お爺よ、何刻もこの世に居らぬものを、なにをのどかに暇どっていなさる……早う、お斎の仕度をせんけれゃ」
「おお、そうじゃったのう……さあ、さあ、お君も手伝うて。