Japanische Klassiker mit Furigana
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いきりょう
久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
久生 十蘭
Lesen Sie 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集 (いきりょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.698 Zeichen · 42 Bildschirme
いや、私は東京から来た旅のものだと三十郎が言ったがそれでも疑念が晴れないふうで、
「これはこれ、旅のお方でござんしたか。……あまりにも弥之さんに似た眉面つきでござるゆえ、なにやくれやと無礼をいたしました。それにしても……」
と、飽かずというぐあいに眺めわたした。
足を洗って、框からいきなり広い段梯子をあがると、谷に向いた檐の深い座敷だった。洋灯の光で夕食をすましてぼんやりしていると、小娘があがって来て、この先の川隈で盆踊をおどっているから見に行ったらどうだと言った。
山曲のありふれた盆踊を見たって面白いこともないのだが、所在がないので、では、行って来ようかと前壺のゆるんだ棕梠の鼻緒の古下駄を曳きずりながら宿を出た。
の厚い大名縞の褞袍に小弁慶のしたうまを重ね、妹背山の漁師鱶七のように横柄に着膨れて谷川に沿った一本道を歩いて行ったが、どこまで行っても山の斜面と早瀬の音。ときたま、鵺鳥がツエーッと鳴いて通るばかり。
いい加減歩いているうちに蝮をつくっていた足の拇指がかったるくなって来たので、歩くのをやめにして川股の洲になったところへ降り、ごろごろ石の瀬に仕掛けた川鱒取の竹籠の中をのぞいていると、川原からいきなり立ちあがった向う岸の斜面の方から、なんとかやアの、どうとかさアと杣引音頭のような歌声が聞えてきた。