Japanische Klassiker mit Furigana
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いきりょう
久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集
久生 十蘭
Lesen Sie 久生十蘭ジュラネスク 珠玉傑作集 (いきりょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.698 Zeichen · 42 Bildschirme
この辺はどの村もみな、谷川と石崖にはさまれた細い道の両側に、雛壇のように板屋を積みあげ、猫の額ほどの平地にも馬鈴薯を植え枝豆を植え、糸すじほどのその畔に玉蜀黍と辣薤をたがいちがいにたくしこみ、そのまたわずかばかりの隙間へみっしりと韮を割込ませる。
そうまでやたらに植込んだ畑では、たとえ、ひとりで踊るにしても、しょせん足を踏みいれるせきはない。どうでも踊はおどりたし、さりとて枝豆は踏みたくなし、それで、このあたりの女たちは畑の畔を跨ぎまたぎ、枝豆も辣薤も踏まずにじょうずに踊れるようになったということだった。狐というのは、妙なやつだ、こんなことまで真似をするのかと、すこし可笑しくなって笑いかけると、女狐はほんとうに怒ったような声で、
「やめなさいってば! そんな馬子足で辣薤を踏んではだめ。……もっと優しい足にしておいで」
三十郎は、笑いながら、
「馬子足で悪かったな、これは生れつきだ」
と、やりかえすと、女狐は、
「あら、人並らしく言うわね……あまり横着をするのはよしなさい。お前は、どこの狐?」
踊るのをやめて、しなよくクルリと向きをかえた。
眼尻の吊りあがった狐目でもしているどころか、張のある、くりっとしたうつくしい眼で、撓ったような長い睫毛がほんのりと眼に深みをつけている。