Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ここのつのかぎ

九つの鍵

野村 胡堂

Lesen Sie 九つの鍵 (ここのつのかぎ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.349 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

引き上げられている愛子も、あまりの事に顛倒して、しばらくは悲鳴をあげることさえ忘れたのでしょう。

その間にも愛子の体は、キリキリと宙に廻って、真紅の裾が街灯の上に燃えます。が、それもほんのしばらくの間で、やがて庇からぬっと出た手が、愛子の襟髪をつかんで、何んの苦もなく屋上に引き上げ、それっきり、すべての事が終ってしまいました。

宙に舞った愛子のおもかげも、絶え絶えに挙げた驚きの声も消えて、正月の番町の夜は深々とふけて行くのです。

交番へ――と三郎はスタートしかけましたが、ここから一番近い交番までも三丁あまり、そこへ行ってくる間に、ビルディングの屋上に釣り上げられた愛子はどんな事になるかわからず、ともかくも、ビルディングの正面に近づいて、その盲扉を押してみましたが、これは又地獄の門のように厳重で、押せども突けどもビクともすることではありません。

三郎はフト気がついてあたりを見ました。さっき愛子に話しかけた、怪しの男がその辺にいたら――と思ったのです。が、そんな者は影も形もなく、その代りどこから這い出したか、蓑虫のような汚ない身なりをした少年がひとり、けげんな顔をして三郎の顔を見上げているのでした。