Japanische Klassiker mit Furigana
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ここのつのかぎ
九つの鍵
野村 胡堂
Lesen Sie 九つの鍵 (ここのつのかぎ) von 野村 胡堂 (のむらこどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 21.349 Zeichen · 42 Bildschirme
口から、巧みにビルの中にはいるのでした。
「さア、もう大丈夫です、屋上へ行って見ましょう」
幸子は懐中電灯を照らしながら身軽に階段を踏んで、二階へ三階へ、そしてペント・ハウスから屋上庭園へ飛び出します。
「いない」
狩屋三郎は屋上を一と眼見て思わず絶望的な声をあげました。曇りてはいるものの、さして広くないビルの屋上は、たった一と眼で隅から隅までよく見えるのです。
そこにはペント・ハウスと、そして敷き詰めた砂利のほかには何んにもありません。いや、正面に突き出した庇の上に、恐ろしく丈夫な麻縄があり、その先きには、これも頑固な――ブルドッグの首でもつなくような、ニッケル鍍金のバネつきの鉤が取りつけてありますが、この麻縄が引き上げた、天才少女、狩屋愛子の姿は見えなかったのです。
「この鉤をバンドに引っかけて釣ったんだね、ひどい事をするじゃないか」
馬吉少年はプンプン腹を立てますが、今さらどうすることもできません。
念のために、ビルの部屋部屋、三階から一階まで、十幾つの部屋を全部見ましたが、どの部屋にも鍵がかかっている上、どの部屋にも灯がなく、そしてどの部屋にも、生き物のいそうなけはいもなかったのです。