Japanische Klassiker mit Furigana
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くがつのあるひ
九月の或る日
宮本 百合子
Lesen Sie 九月の或る日 (くがつのあるひ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.130 Zeichen · 11 Bildschirme
「いいえ、でも行く前に一遍来たいと思ったんです」
堤を行くとき、
「言問いでこの頃洋食をやっているんですってね」
と網野さんが云った。
荒れの後だし、秋が浅すぎるので百花園も大したことはなかった。萩もまだ盛りとゆかず、僅に雁来紅、百日紅、はちすの花などが秋の色をあつめている。然し、人気なく木立に蝉の声が頻りな中に、お成座敷の古い茅屋根の軒下に繁る秋草などを眺めると、或る落付きがある。私共は座敷にある俳句を読んだりした。
「どうです? 一句――」
呑気に俳句の話が弾んだ。
「百日紅というのだけは浮んだんですけどね、下の句でなくちゃね」
網野さんが一寸本気になりかけたので皆笑いだした。すると、それにつづき、
「この間の皮と身と、はどうです、あれは傑作だったな」
と、Yがはあはあ笑い出した。網野さんは忘れたと見え、
「え?」
と云ったが、忽ち、
「ああ」
と自分も笑い出した。
三
一日に泊った翌日帰りしなになって、健康の話が出た。
「指で抓んで見て、皮と身が離れるのが分るようじゃいけないんだそうですね」
「そりゃそうでしょう」
「こうして見て――」
網野さんは軽く拇指と人さし指の先で自分の腕をつまんだ。