Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

Lesen Sie 二つの庭 (ふたつのにわ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.492 Zeichen · 389 Bildschirme

Aozora Bunko

やがて、ゆっくり歩いて客室のところに行ってハンドルに手をかけ、うす緑の羽織姿を半ば消しかけたとき、泰造が大きな声を出してこちらの食堂からどなった。

「今後も決して会わん。すぐ帰って貰おう!」

泰造はそばに動かずにいる伸子の方をみず、血の色ののぼった髭の白い顔をがんこに書類にむけている。その横顔が伸子の目の前にあった。その父の耳のなかの小さくとがったところに黒い毛がもしゃもしゃ生えている。伸子は、涙が浮んだ。日頃つづいていたにちがいない父の不快さや、こういう腹立ちの爆発のしかたに同情がもてた。みっともないと思えなかった。理づめな物言いの出来ない父、そして、面と向った対人関係では気のよわい父には、せっぱつまるとこういう爆発をするしかない気質がある。伸子にそれがよくわかった。

伸子は、そっと立って、洗面所へ行った。ハンカチーフで涙を拭いたあとの顔を、そこの壁につけてある鏡にうつした。人の心のなごまるようにと、この家の門の石じきには花の形がちりばめてあるのに。――

流しの前に、木の椅子がおいてある。ひっくりかえすと踏台になる椅子だった。伸子が小さかった時から、その椅子はそこにある。