Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
Lesen Sie 二つの庭 (ふたつのにわ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.492 Zeichen · 389 Bildschirme
ひるすぎの明るい小座敷の光線で、ピンにちりばめられたガーネットは深いしぶい紅にかがやいて見事だった。伸子は、そうやって静かに髪を結ったり、ピンの手入れをしたりしている多計代の様子から、多計代の感情が一つの峠を越して、前崎から帰って来ていることを直感した。伸子へのものいいも、温和になっている。そういえば、陽炎と一緒に野火がチロチロ燃え走っているように感情の揺らぎのあらわだった多計代の亢奮した表情は、沈静され、滑らかな頬のあたりはいくらか蒼ざめて見える。伸子はピンの上に落ちている母の視線と、下目に伏せられているまつ毛のかさなりを横から眺めた。
「――あの話、どうなすった?」
前ぶれなくふっと一枚の木の葉が落ちかかって来たように、伸子がきいた。
「わたし、やっぱり気になるわ」
多計代は、拭き終ったピンを右手にとり、左ひじを高くあげて髷をおさえながら、束髪の真中に飾りピンをさした。鏡に向って坐っている胸をはって、しっかり、ゆっくりそのピンをさし終ると、伸子の方は見ず、あらためて鏡の中に髪の結いぶりをしらべるような目をやりながら、
「――男なんて……」
毛すじをとりあげて、前髪の毛なみを直しながら上目で鏡を見据えつつ、