Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
Lesen Sie 二つの庭 (ふたつのにわ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.492 Zeichen · 389 Bildschirme
伸子は、うちにいるという保に会うつもりで、いつもの二階の北側の小部屋へ行ってみた。鴨居にはられているメディテーションという貼紙のはしが暑気に乾き上って少しめくれかかっている。机のよこの障子は、はずされていて、内庭の八つ手の梢の上に高くそびえているタンクでモーターが鳴り、風呂水をくみ上げている。保はそこにいなかった。保がいないで開放されている書斎を見まわして、伸子は、そこにあるどの本棚も、例によって教科書ばっかりなのに、いまさら不思議な気がした。この前、ここで保としゃべったりしたときから、もう数ヵ月たっている。それだのに、伸子の目には教科書以外の一冊の新しい本も見当らなかった。園芸の本だけは一かたまり、もとからのところに立ってはいるが。――
乱読して来た伸子には、保の若々しい精神がこの本棚のような有様でもちこされているということには合点がゆかなかった。
「保さん、いなかったわよ」
伸子は、実家へ遊びに来ている大きい娘というようないくらか甘えた声で母にいった。
「出かけちゃったのかしら」
「ああそうそう、保さんはね、土蔵だよ」
「土蔵?」
かたづけものでもたのまれたのだろう。