Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

Lesen Sie 二つの庭 (ふたつのにわ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.492 Zeichen · 389 Bildschirme

Aozora Bunko

――よすぎるくらいだわ」

伸子は、半分ふざけて、それがまさか、と否定されることを予想しながら、

「ピアノはなんなの? ベッシュタイン?」

ときいた。のり子は、

「あっちのはひどいのですけれど……」

自然な調子で、

「うちのはそうでございます」

と答えた。昔亡夫は大学教授であったというのり子の家庭のあらましが、そのピアノのことからだけでもおしはかられた。

「――母もすきで、下手でございますけれど弾きますの、若いころには音楽学校に入りたかったんですって」

のり子は、来年の春、その大学を卒業しようとしているのであった。大島のり子というひとは、いい紙に大きい仮名でかかれた手紙のような感じだった。ペンでつめた字ばかり書いている伸子にとっては、のり子と向い合って話している気分の行間が、いかにもゆっくりのびていた。そして、そのゆったりとられた行間はただの余白というのではなくて、かかれた文字の余韻の響いているところという風だった。伸子に、こういう若い友達は珍しかった。のり子としては、哲学も、つまりは人間の趣味の一つと考えているというのが、そのままうなずけた。

のびやかに話している大島のり子の、どこやら漱石の女性が進化したような雰囲気を感じながら、伸子は、このひとがもっている話したいことというのは、どういう事なのだろうと思った。