Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
Lesen Sie 二つの庭 (ふたつのにわ) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 195.492 Zeichen · 389 Bildschirme
自動車は、江戸川の通りから豊川町の高台へのぼる大きい坂にさしかかった。クッションに頭をもたせかけたまま、いつかうつらうつらしたらしい素子が、
「どのへんだい?」
上体をおこして、窓の外をみた。そして、
「もうじきだ」
またクッションにもたれこんだ。
伸子は、目的のところが近づくにつれてまた段々遠方へ出発する前のあわただしい心持になって来た。そして、和一郎にたのまれたことは、忘れずあしたでも行ったとき多計代に話しておかなければならない、と思った。おととい動坂へ行ったとき、和一郎は出会いがしらに伸子を廊下でつかまえて、人気のない客間につれこんだ。そして灯もつけず、椅子と椅子との間に立ったまま、自分はどうしても従妹の小枝と結婚する。多計代たちはきっと反対だろう。どんなに反対したって、譲らないから、そのことを、伸子が行ってしまう前多計代に予告しておいてくれというのだった。
「その決心――かわりようがない?」
伸子はしばらくだまっていた後、しずかにききかえした。伸子は血族の結婚には不安を感じるのであった。
「かわらない!」
伸子の不賛成をぼんやり感じた和一郎は、にらむように姉に目をすえながら、低い熱い声でくりかえした。