Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたつのてがみ
二つの手紙
Lesen Sie 二つの手紙 (ふたつのてがみ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.799 Zeichen · 24 Bildschirme
私が側へ参りますと、妻はいつもの調子で、「長かったわね」と申しました。それから、私の顔を見て、今度はおずおず「どうかして」と尋ねました。私の顔色は確かに、灰のようになっていたのに相違ございません。私は冷汗を拭いながら、私の見た超自然な現象を、妻に打明けようかどうかと迷いました。が、心配そうな妻の顔を見ては、どうして、これが打明けられましょう。私はその時、この上妻に心配させないために、一切第二の私に関しては、口を噤もうと決心したのでございます。
閣下、もし妻が私を愛していなかったなら、そうしてまた私が妻を愛していなかったなら、どうして私にこう云う決心が出来ましょう。私は断言致します。私たちは、今日まで真底から、互に愛し合って居りました。しかし世間はそれを認めてくれません。閣下、世間は妻が私を愛している事を認めてくれません。それは恐しい事でございます。恥ずべき事でございます。私としては、私が妻を愛している事を否定されるより、どのくらい屈辱に価するかわかりません。しかも世間は、一歩を進めて、私の妻の貞操をさえ疑いつつあるのでございます。――
私は感情の激昂に駆られて、思わず筆を岐路に入れたようでございます。