Japanische Klassiker mit Furigana
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ふたつのてがみ
二つの手紙
Lesen Sie 二つの手紙 (ふたつのてがみ) von Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.799 Zeichen · 24 Bildschirme
して見ますと、この場合、私の眼に映じた妻の姿は、ドッペルゲンゲルでなくて、何でございましょう。私は、妻が私に外出の有無を問われて、眼を大きくしながら、「いいえ」と云った顔を、今でもありありと覚えて居ります。もし世間の云うように、妻が私を欺いているのなら、ああ云う、子供のような無邪気な顔は、決して出来るものではございません。
私が第二の私の客観的存在を信ずる前に、私の精神状態を疑ったのは、勿論の事でございます。しかし、私の頭脳は少しも混乱して居りません。安眠も出来ます。勉強も出来ます。成程、二度目に第二の私を見て以来、稍ともすると、ものに驚き易くなって居りますが、これはあの奇怪な現象に接した結果であって、断じて原因ではございません。私はどうしても、この存在以外の存在を信じなければならないようになったのでございます。
しかし、私は、その時も妻には、とうとう、あの幻影の事を話さずにしまいました。もし運命が許したら、私は今日までもやはり口を噤んで居りましたろう。が、執拗な第二の私は、三度私の前にその姿を現しました。これは前週の火曜日、即ち二月十三日の午後七時前後の事でございます。