Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ふたつのしょうがつ

二つの正月

寺田 寅彦

Lesen Sie 二つの正月 (ふたつのしょうがつ) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.947 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

それがやはりロシア語であったことになっている。そんなことは解るはずがないのに、夢のような記憶では、それがそうであったことになっているのである。当時の露国海軍のブルータルな勢力の圧迫が若い頭に何かしら強い印銘を与えていたかもしれない。

時津の宿で何とかいう珍しい貝の吸物を喰わされた。ずっと後にかの地における切支丹迫害の歴史を読んで以来はこの貝の吸物が切支丹と一緒に思い出されるのも不思議であるが、要するにどちらも私にはかなりに官能的なものである。

時津から早岐まで、哀れげな小蒸気船に乗っての大村湾縦走はただうすら寒い佗しい物憂さの単調なる連続としてしか記憶に残っていない。佐世保もただ殺風景な新開町であった。有田については陶器よりも別な珍奇なものが頭の中のスケッチブックに記録されている。村外れの茶店で昼飯を食った時に店先で一人の汚い乞食婆さんが、うどんの上に唐辛子の粉を真赤になるほど振りかけたのを、立ちながらうまそうに食っていた姿が非常に鮮明に記録されている。こういうのはおそらくその後何かの機会に何遍となく同じ記憶の復習をし修繕を加えて来たために三十年後の今日まで保存されているのであろう。