Japanische Klassiker mit Furigana
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にんげんさんすいずまき
人間山水図巻
吉川 英治
Lesen Sie 人間山水図巻 (にんげんさんすいずまき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.343 Zeichen · 21 Bildschirme
億劫そうに、彼は腰かけながら見ていた。手下達は仮借なく老人の衣服を解きほぐした。老人は彼等のなす儘にまかせ、子供のように素直だったが、ただ一つ、きたない、嚢包みだけは、手に抱いて離さなかった。
『そいつを奪ってこっちへよこせ』
蕭照のことばに、荒くれた腕ぶしが、老人の拒みをヘシ折って、その嚢をお頭の手へ移した。
『おや』
この山で見た事もない品がその嚢から出て来た。何本かの画筆であり旅硯であり絵の具であり画冊であった。
『爺さん、画描きかい、お前さんは』
『うむ、そんな者じゃ』
老人は、毛をむしられた鶴みたいにふるえていた。が、そのくせ微笑んでいるような温顔でもあった。
『旅絵師というやつかね』
『これでも、徽宗皇帝さまの世には、宣和画院のひとりでしたよ。待詔金帯を賜わってのう』
老人の眸は回顧をなつかしんでいた。前北宋の画院にいた帝室技芸員の一員と聞いて、蕭照も何だかむかし話もしたくなったらしく、
『そうかい、そいつは奇縁だな、俺も実は、御林の兵隊だった事もあるんだ。おいおい着物を返してやれよ、そんなボロを奪ってみても始まらねえ』
それから蕭照は、こっちへ来いと、山寨の中へ彼をつれこんだ。