Japanische Klassiker mit Furigana
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にんげんさんすいずまき
人間山水図巻
吉川 英治
Lesen Sie 人間山水図巻 (にんげんさんすいずまき) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.343 Zeichen · 21 Bildschirme
それにひきかえ、あの老画師のにこやかさは何うだ、いつ会っても玲瓏と笑えるあの顔は羨やましいものである。――なるほど絵というものもおもしろいものだが、何よりは老画師のあの顔は、自分たちの仲間のうちには類のない顔だ。
そう思うと、彼は自分の醜悪な人相がおもいやられた。初めて山寺の炉べりで友の夏駿の顔に気づいたあの相貌が、今の自分にもあるにちがいないと思った。
『また来ましたよ』
翌日もつい蕭照は老画師の小堂を訪れていた。そしてまた熱心に見入っていると、
『画はお好きかの』
と、この老画師としてもめずらしい初めての問いを彼に向けた。
『さあ、嫌いでもないようだな。こう見ていられるところをみると』
『少しずつ、習うてみなされ。どうじゃな、今日からでも』
『とんでもねえこッた』
彼は彼自身を侮蔑して平気だった。
『絵なぞ描けるくらいなら、何も粋狂に、こんな山ん中で泥棒なんぞしている奴があるもんか、このがさつ者の不器用者にゃ、とても、とてもよ』
『そんな事はない』
老画師は、真面目である。そして云うには、人間の本能のうちには、盗み心だの、残忍性だの、あらゆる悪魔的なものも、当人が自覚するとしないとに関わらず潜んでいるが、その反対なもの、善真なもの、たとえば絵心のごときでも、実は誰にでも必ずある筈のものなのだ。