Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あだうちさんたい

仇討三態

菊池 寛

Lesen Sie 仇討三態 (あだうちさんたい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.136 Zeichen · 33 Bildschirme

Aozora Bunko

彼は、母の消息を手にして、心が傷んだ。十一年の間、空しく自分を待ちあぐんでいる痛ましい母の心が、彼を悲しませた。彼は新しい感激で、大和から伊勢へ出て、伊勢から東山道を江戸へ下った。が、敵らしいものの影をさえ見なかった。尋ねあぐんだ彼は、しようことなしに奥州路を仙台まで下ってみた。が、それも徒労の旅だった。江戸へ引っ返すと、碓氷峠を越えて信濃を経て、北陸路に出て、金沢百万石の城下にも足を止めてみた。が、その旅も空しい辛苦だった。近江から京へ上ったのが、元禄九年の冬の初めである。国を出てから、十四年の月日が空しく流れていた。故郷の空が、矢も楯もたまらないように恋しかった。二十二で、故郷を出た彼は、すでに初老に近かった。母が恋しかった。安易な家庭生活が恋しかった。無味単調な仇討の旅に、彼はもう飽き飽きしていた。が、一旦、仇討を志した者が、敵を討たないで、おめおめと帰れるわけはなかった。行き暮れて辻堂に寝たときとか、汚い宿に幾日も降り籠められていたときなどには、彼はつくづく敵討が嫌になった。彼は、いっそ京か浪華かで町人になり下って、国元の母を迎えてのどかな半生を過そうかとさえ思った。