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Japanische Klassiker mit Furigana

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あだうちさんたい

仇討三態

菊池 寛

Lesen Sie 仇討三態 (あだうちさんたい) von 菊池 寛 (きくちかん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.136 Zeichen · 33 Bildschirme

Aozora Bunko

その羽二重らしい生地が、多年の作務に色が褪せて、真っ赤になっている。紋の所だけは、墨で消したと見え、変に黒ずんでいる。惟念はついおかしくなって思わず微笑をもらした。が、ふとその刹那にこの人も元は武士だったなと思った。彼は何気なくその墨で黒ずんでいる紋を見つめていた。それは、ほとんど消えかかっているけれども、丸の内に二つの鎌が並んでいるという珍しい紋だった。

惟念の全身の血が急に湧き立った。二つの鎌が並んでいる紋、それは彼が過去十六年の仇討の旅の間、夢にも忘れなかった仇敵の紋である。父の敵は、召し抱えられてから間もない新参であったため、部屋住みだった彼は、ただ一、二度顔を合わしただけである。その淡い記憶が、幾年と経つうちに薄れてしまって、他人からきいた人相だけが、唯一の手がかりであった。その中でも、敵の珍しい紋所と、父が敵の右顎に与えてあるはずの無念の傷跡とが、目ぼしい証拠として、彼の念頭を離れなかった。彼は先に行く武士、擦れ違う武士、宿り合わした武士、そうした人々の紋所を、血走った目で幾度か睨んだことだろう。

惟念は担いでいる薪束を放り出して、老僧の首筋を、ぐいと掴んで、その顔を振り向けたい気がした。