Japanische Klassiker mit Furigana
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いまどしんじゅう
今戸心中
広津 柳浪
Lesen Sie 今戸心中 (いまどしんじゅう) von 広津 柳浪 (ひろつりゅうろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 36.688 Zeichen · 74 Bildschirme
さア、早く帰ッておくれ。本統に呆れた人だよ」
吉里は悄然として立ち上ッた。
「きッと平田さんへ届けておくんなさいよ」
小万は返辞をしなかッた。
次の間へ出た吉里はまた立ち戻ッて、「小万さん、頼みますよ。西宮さんへもよろしくねえ」
小万はまた返辞をしなかった。
吉里はお梅を見て、「お梅どん、平田さんの時分にはいろいろお世話になッたッけね。西宮さんがおいでなさッたら、吉里がよろしく申しましたと言ッておくれよ。お梅どん、頼みますよ」
お梅はうつむいて、これも返辞をしなかッた。
吉里は上の間の小万をじッと見て、やがて室を出て行ッたかと思うと、隣の尾車という花魁の座敷の前で、大きな声で大口を利くのが、いかにも大酔しているらしく聞えた。
その日も暮れて見世を張る時刻になッた。小万はすでに裲襠を着、鏡台へ対って身繕いしているところへ、お梅があわただしく駈けて来て、
「花魁、大変ですよ。吉里さんがおいでなさらないんですッて」
「えッ、吉里さんが」
「御内所じゃ大騒ぎですよ。裏の撥橋が下りてて、裏口が開けてあッたんですッて」
「え、そうかねえ。まア」
小万は驚きながらふッと気がつき、先刻吉里が置いて行ッた手紙の紙包みを、まだしまわず床の間に上げておいたのを、包みを開け捻紙を解いて見ると、手紙と手紙との間から紙に包んだ写真が出た。