Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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たにんのなつ

他人の夏

山川 方夫

Lesen Sie 他人の夏 (たにんのなつ) von 山川 方夫 (やまかわまさお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 3.115 Zeichen · 7 Bildschirme

Aozora Bunko

その人を好きなように死なしてやるほうが、ずっと親切だし、ほんとうは、ずっと勇気のいることなんだ、って……」

女の顔に夜光虫の緑の燐光が照って、それが呼吸づくように明るくなり、また暗くなった。女は怒ったような目つきで、海をみつめていた。

「ぼくの親父も、自殺したんです。背骨を打ってもう漁ができなくなって、この沖で銛をからだに結えつけてとびこんじゃったんです。……あなたも、ぼくはとめはしません」

彼は岸に顔を向けた。そのままゆっくりと引きかえした。真暗な夜の中で、ただ夜光虫だけが彼につづき、波間にあざやかに濡れた色の燐光を散らしていた。

真赤なスポーツ・カーが、慎一のいるガソリン・スタンドに止まったのは、翌日の夕暮れ近くだった。ガソリンを入れに近づく慎一の顔を見て、女はサン・グラスをとり、急に目を大きくした。

「昨夜は」といい、女は笑いかけた。「……ねえ、あのお話、ほんとう?」

「ほんとうです」と、慎一は答えた。

「……そう。ありがと。私、あれから一時間近くかかって、やっと岸に着いたわ」

女は、慎一の手を握った。

「あなたに、勇気を教えられたわ。それと、働くってことの意味とを」