Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はくしゃくのかんざし

伯爵の釵

泉 鏡花

Lesen Sie 伯爵の釵 (はくしゃくのかんざし) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.403 Zeichen · 39 Bildschirme

Aozora Bunko

真中の築洲に鶴ケ島というのが見えて、祠に竜神を祠ると聞く。……鷁首の船は、その島へ志すのであるから、滝の口は近寄らないで済むのであったが。

「乗ろうかね。」

と紫玉はもう褄を巻くように、爪尖を揃えながら、

「でも何だか。」

「あら、なぜですえ。」

「御幣まで立って警戒をした処があっちゃあ、遠くを離れて漕ぐにしても、船頭が船頭だから気味が悪いもの。」

「いいえ、あの御幣は、そんなおどかしじゃありませんの。不断は何にもないんだそうですけれど、二三日前、誰だか雨乞だと言って立てたんだそうですの、この旱ですから。」

八

岸をトンと盪すと、屋形船は軽く出た。おや、房州で生れたかと思うほど、玉野は思ったより巧に棹をさす。大池は静である。舷の朱欄干に、指を組んで、頬杖ついた、紫玉の胡粉のような肱の下に、萌黄に藍を交えた鳥の翼の揺るるのが、そこにばかり美しい波の立つ風情に見えつつ、船はするすると滑って、鶴ケ島をさして滑かに浮いて行く。

さまでの距離はないが、月夜には柳が煙るぐらいな間で、島へは棹の数百ばかりはあろう。

玉野は上手を遣る。

さす手が五十ばかり進むと、油を敷いたとろりとした静な水も、棹に掻かれてどこともなしに波紋が起った、そのせいであろう。