Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はくしゃくのかんざし

伯爵の釵

泉 鏡花

Lesen Sie 伯爵の釵 (はくしゃくのかんざし) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.403 Zeichen · 39 Bildschirme

Aozora Bunko

ヒイと声を揚げて弟子が二人、幕の内で、手放しにわっと泣いた。

赤ら顔の大入道の、首抜きの浴衣の尻を、七のずまで引めくったのが、苦り切ったる顔して、つかつかと、階を踏んで上った、金方か何ぞであろう、芝居もので。

肩をむずと取ると、

「何だ、状は。小町や静じゃあるめえし、増長しやがるからだ。」

手の裏かえす無情さは、足も手もぐたりとした、烈日に裂けかかる氷のような練絹の、紫玉のふくよかな胸を、酒焼の胸に引掴み、毛脛に挟んで、

「立たねえかい。」

十三

「口惜しい!」

紫玉は舷に縋って身を震わす。――真夜中の月の大池に、影の沈める樹の中に、しぼめる睡蓮のごとく漾いつつ。

「口惜しいねえ。」

車馬の通行を留めた場所とて、人目の恥に歩行みもならず、――金方の計らいで、――万松亭という汀なる料理店に、とにかく引籠る事にした。紫玉はただ引被いで打伏した。が、金方は油断せず。弟子たちにも旨を含めた。で、次場所の興行かくては面白かるまいと、やけ酒を煽っていたが、酔倒れて、それは寝た。

料理店の、あの亭主は、心優いもので、起居にいたわりつ、慰めつ、で、これも注意はしたらしいが、深更のしかも夏の夜の戸鎖浅ければ、伊達巻の跣足で忍んで出る隙は多かった。