Japanische Klassiker mit Furigana
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はくしゃくのかんざし
伯爵の釵
泉 鏡花
Lesen Sie 伯爵の釵 (はくしゃくのかんざし) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 19.403 Zeichen · 39 Bildschirme
心着けば、正面神棚の下には、我が姿、昨夜も扮した、劇中女主人公の王妃なる、玉の鳳凰のごときが掲げてあった。
「そして、……」
声も朗かに、且つ慎ましく、
「竜神だと、女神ですか、男神ですか。」
「さ、さ。」と老人は膝を刻んで、あたかもこの問を待構えたように、
「その儀は、とかくに申しまするが、いかがか、いずれとも相分りませぬ。この公園のずッと奥に、真暗な巌窟の中に、一ヶ処清水の湧く井戸がござります。古色の夥しい青銅の竜が蟠って、井桁に蓋をしておりまして、金網を張り、みだりに近づいてはなりませぬが、霊沢金水と申して、これがためにこの市の名が起りましたと申します。これが奥の院と申す事で、ええ、貴方様が御意の浦安神社は、その前殿と申す事でござります。御参詣を遊ばしましたか。」
「あ、いいえ。」と言ったが、すぐまた稚児の事が胸に浮んだ。それなり一時言葉が途絶える。
森々たる日中の樹林、濃く黒く森に包まれて城の天守は前に聳ゆる。茶店の横にも、見上るばかりの槐榎の暗い影が樅楓を薄く交えて、藍緑の流に群青の瀬のあるごとき、たらたら上りの径がある。滝かと思う蝉時雨。光る雨、輝く木の葉、この炎天の下蔭は、あたかも稲妻に籠る穴に似て、もの凄いまで寂寞した。