Japanische Klassiker mit Furigana
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のびじたく
伸び支度
島崎 藤村
Lesen Sie 伸び支度 (のびじたく) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.120 Zeichen · 13 Bildschirme
事実上の細かい注意を残りなくお初から教えられたにしても、こんな時に母さんでも生きていて、その膝に抱かれたら、としきりに恋しく思った。いつものように学校へ行ってみると、袖子はもう以前の自分ではなかった。ことごとに自由を失ったようで、あたりが狭かった。昨日までの遊びの友達からは遽かに遠のいて、多勢の友達が先生達と縄飛びに鞠投げに嬉戯するさまを運動場の隅にさびしく眺めつくした。
それから一週間ばかり後になって、漸く袖子はあたりまえのからだに帰ることが出来た。溢れて来るものは、すべて清い。あだかも春の雪に濡れて反って伸びる力を増す若草のように、生長ざかりの袖子は一層いきいきとした健康を恢復した。
「まあ、よかった。」
と言って、あたりを見した時の袖子は何がなしに悲しい思いに打たれた。その悲しみは幼い日に別れを告げて行く悲しみであった。彼女は最早今までのような眼でもって、近所の子供達を見ることも出来なかった。あの光子さんなぞが黒いふさふさした髪の毛を振って、さも無邪気に、家のまわりを駆けっているのを見ると、袖子は自分でも、もう一度何も知らずに眠ってみたいと思った。